あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
その紗桜の嫌味が通じているのかいないのか、使節団たちは誰一人としてその彫刻のような顔を動かさず、代表者が連絡を続ける。
「まずは代表の元へとご案内いたします。代表は城にて待っております」
来た。
あたしたち3人の間に、ピリッとした空気が漂う。
今回の目玉。
本来の目的である、この国の代表に会うんだ。
まずは入国の挨拶、といった軽い面会といった感じで本来の会談は明日、という形になる。
挨拶が終わったあとは、この国を案内してもらってこの国の成り立ち、歴史、文化に触れる、といった日程だ。
「ご案内いたします」
使節団は、さっさと飛び立つ準備に入り、その大きな翼を広げた。
「ちょっと待って」
それを紗桜が止まる。
「ここで魔力を使うことは可能?」
そう、問いかけた。
使節団の代表はしばし動きを止めたが、その後、幾度か瞬きを繰り返した。
「ここでの魔力の使用は禁じられております。本来この地に魔力を持ち込むこと自体禁忌」
「魔力は、『不純なもの』だから?」
「…………」
代表は次の問いには、答えなかった。
それは、肯定を表していた。
「……っ⁉︎」
言いようのない熱いものが、胸の奥から迫り上がってくる。
紗桜は濁して言ったけれど、魔力をまるで嫌悪している言い方……。
不純なもの……つまり、穢れていると……?
けれどここでそれを感情として表すことはできなかった。
今のあたしたちの行動にウェズリアの命運がかかっているかもしれないんだ。
そっと隣のカカオを見上げると、いつもと変わらぬ無表情を浮かべていた。
いや、あたしには分かる。
内心、とても憤っている。
握り締めた拳に、少しだが力が入っている。
一番悔しいはずのカカオが、耐えている。
あたしが動じるわけにはいかない。
それに今まで一切交流の無かった国同士だ。
こんなものは序の口だろう。
互いに何も知らないのだ。
認識の違いなど、ほとんどではないのか。
「それで」
沈黙が支配している中、それを破ったのはまたもや紗桜だった。
「使ってはいけないということはわかったわ。それで?私たちがこれから向かうのは天空の城でしょう?しかも空を飛んで。私は翼もあるし、天力もあるからいいけれど、カカオ陛下と麻央はどうなるの?御上もそれを当然わかっているわよね?まさかわかっていなかったとは言わないでしょう?それとも貴方たちがわざとそんな態度をとっているの?」
わー、紗桜お怒り。
煽りまくっている。
けれど、紗桜の言う通りだ。