あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 魔力を使うことを禁じられたあたしたちには、空を飛ぶ術などない。

 使節団たちも何か空飛ぶ馬車のようなものを用意しているならまだ話は別だったけれど、なんの用意もないんだもの。

 これは怒っていいよねぇ?

 
「何か方法はないだろうか。用意していただけるとありがたい」


 カカオは、極めて冷静に使節団に頼む。

 ああ、カカオがこんなことをしなくてもいいのに。

 今回は三国の王たちが平等なはずじゃないの?

 けれど、カカオは謙るような、そう取られるような態度で接している。

 ううん、カカオもわかってる。

 けれど、これ以上悪化させないように、なにかの拍子でウェズリアの評判を下げないように、彼は冷静であろうとしている。

 悔しい。
 彼が、そうせざるおえない状況にさせてしまったことが。

 あたしは何のためにきたんだ。

 悔しさで、俯き、ぎゅっと目を瞑る。
 そして、ゆっくりと大きく息を吐いて力を抜いた。

 そうこうしているうちに話がついたらしく、使節団が何かに向かって指示を出していて、後ろの方から白いペガサスが二頭、光を纏って宙を駆けてきた。

 その背中には荷台があり、どうやらこれが天界の馬車らしい。

 あたしたちが今立っている島に横づけるようにして、馬車が止まる。


「ご用意が遅れ、大変申し訳ございません。ウェズリア王国の御二方はこちらをご利用ください」


 そう、淡々と言われれば、はい、としか返せなかった。

 そんな鬱屈とした気持ちを吹き飛ばしそうになったのが、やはりペガサスの存在だ。

 真っ白な体軀、鬣、そして、純白の翼。

 白い馬はカカオの使い魔のボルトで見慣れてはいたけれど、やはり別物だと言うことがよくわかる。

 ボルトはまさに、駿馬といった感じで筋肉盛り盛りの美しさがあるけれど、ペガサスはどこか儚さを感じる。

 あの巨体を浮かせる筋力があるから筋肉質なのは変わらないけれど。

 きっとユニコーンは本当に綺麗な儚さがあるんだろうなぁ、なんて考えてみたり。

 いるかどうか知らないんだけどね、この世界にならいそうな気がする。

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