あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
カカオと二人で馬車に乗り込むと、使節団たちは馬車を取り囲んだ。
一応の護衛のつもりだろうか。
そのまま一行は代表を筆頭に、ほかの施設、紗桜、馬車といった順に空を緩やかに駆けていく。
速度はいつも箒で飛ぶよりも随分と遅い。
ゆったりとして優雅っちゃ優雅なのか……。
向かう先はもちろん、一番大きな建造物 白銀に光る城だ。
ロココ調のような白で統一された馬車には小さな丸窓がついており、そこから外をわずかに覗くことができる。
見えるのは、遮るもののないどこまでも広がる空だ。
今、本当に天にいるんだな、なんてぼんやりと考える。
すると、
「まお」
と隣から小さく声をかけられた。
そちらを向こうとすると、「あくまで談笑している風に」と合図が出される。
こそこそと話して何かを企んでいると思われたくないからね。
あたしはそのまま窓の外の景色に見惚れたふりをしつつ、唇の最小限の動きだけで会話する。
「どうしたの?」
「今の時点でなにか違和感を感じたりしたか?ここでは魔力が使えない以上、魔力で何か感知することなど、そう無いと思うが」
「……あたしは今のところはない。ぱっと見紗桜にも様子に変化は見えない。彼女がなにも感じていないのなら、今はとりあえず安心していいと思う」