あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]



 カカオの部屋を後にしたあたしは、自分の部屋に戻り、退室していたクコを再び呼ぶ。

 そして、なにもない空間に向かって手を差し出した。


「シュガー」


 すると、紫色に光る魔方陣が現れ、その中から金の目を持つ黒猫が、艶やかな毛並みを見せ付けるように、しなやかに重さを感じさせない動きであたしの差し出した腕を伝い、肩に乗った。


「はいはい、ご主人サマ」


 小柄なこの黒猫はあたしの使い魔 シュガー。

 魔女の使い魔が黒猫なんて、まさに魔女って感じがする。


「カカオとの話、聞いてたでしょう?」

「ああ、使い魔が行方不明とかなんとか言ってるやつか」

「その情報収集をカカオに頼まれたの。 今から行こうと思ってるわ。 できれば、クコもお願いしたいのだけれど」

「私は、まお様の侍女です。 まお様が行く場所へは、どこへでもお供しますわ」


 上品に微笑んだクコはふわりとお辞儀をする。

 その耳は少しだけ尖っている。

 クコは妖精族。

 希少とされている治癒魔法だ。

 いてくれると、とても心強い。

 カカオは少数派で任務を遂行しろって言ってたけど、もう少し戦力はほしい。

 ということは……クレアにお願いしよう。

 クレアは15歳から通う魔術師学校すら飛ばして、わずか10歳で軍隊にスカウトされ入隊した、天才魔術師だ。

 そういえば、不慮の事故以来ずっと眠りつづけていた使い魔が目覚めたという噂を耳にした。


 
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