ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
***
もはや毎日の日課になっていた、空中散歩。
今日もショウを翼に変化させるため、ショウは私を後ろから包み込むように抱きしめた。
暖かい、彼の腕。
ショウの腕に包まれると、私はとても安心した。
なんでも、できる気がした。
そしていつものように、丘の上でショウを翼に変化させていると……。
「天使のおねーちゃん!」
村の方から、とてとてと私よりも小さな男の子が慌てた様子で駆け寄ってきた。
ちょうど変化が終わり、ショウを翼にして背に背負った私は転びかけた男の子を両手で掬うようにして支える。
「ここは岩場なんだから、足もと、気をつけて歩かなくちゃダメだよ。1人でどうしたの?そんなに慌てて」
私はしゃがみ込み、男の子と目線を合わせる。
男の子は、目を真っ赤にして涙ぐんでいた。
「──助けて!」
「え?」
「おとうさんが、バケモノに襲われたんだ!」
「どういうこと?」
とたんに緊迫感が、私の心を支配する。
ショウも気配でただごとではないと、悟ったのだろう。
バサリと力強く羽ばたいた。
羽根のひとつひとつすべてに、力がこもっているのがわかった。