ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
03
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「……よし、あそこだね……」
あれから一夜が明けて、私は男の子が言っていた森へと来ていた。
両親には内緒で、朝こっそりと家を抜け出してショウを翼にして飛んできたのだ。
この森は、昔から何か恐ろしいものがでる、と言われていて小さいころ悪いことをすると、
「バケモノが住む森に放り込むぞ」
と、よく大人に脅された。
森からは特に怪しい魔力は感じず、けれど重々しい空気が漂っているのがわかった。
「行こう」
意を決して一歩踏み出すと、翼が返事をするように羽ばたいた。
ジメジメと湿っぽい森は、ほとんどが苔に覆われていて、当たり一面緑に埋め尽くされていた。
木々は生い茂っており、漏れ出てくる光は僅かなものだ。
この辺だよね……。
あの男の子によると、男の子のお父さんはあまり遠くに行ってなかったって言ってたし。
辺りを注意深く見渡していたそのとき。
冷たい風が突如吹き荒れ、木々が不自然に揺れ出した。
空気の振動を肌で感じた。