ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
なにか、くる……。
周囲を警戒しつつ、ゆっくりと後退りをして、少し広い空間に出た。
「────」
「…………っ!」
何かが空気を裂き、目の前に迫る。
即座に翼を広げ、空中で回って避けると、宙に浮いた。
何者!?
そこには、剣を構えた者と、手を前に掲げ、魔方陣をその手に宿した者。
そのふたりの後ろには、まだ数十人が控えていた。
彼らの瞳は──青。
つまり、ウェズリアのひとたちだ……。
感じる魔力量は魔法使いといったところ。
装備からして、盗賊だろう。
このあたりを住処として、この森周辺を通る旅人を襲っているのだ。
思いがけない展開に、声が震えてしまう。
心臓が、握り潰されそうな感覚に襲われた。
「へへへ、お前、天使とか呼ばれているらしいじゃねぇか」
「しかも、こんな村の出身なのに、魔力は魔術師並……しかもヘタな魔術師よりよっぽど高い魔力を持っている」
「だから……?」
今、何も身につけていないことなど、彼らからすれば一目瞭然なのに。
魔術師……魔力?
話の意図がわからず、警戒心を解くことができない。
私を、どうしようっていうの?
「我らが主に差し出すのさ」
「……主?」
どういうこと?
すると、ずらりと並んでいた魔法使いたちは、突然半分に割れ、中央に道ができた。
その後ろから現れたのは……。