ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉


 戸惑う私を置き去りにして、両親は話に花を咲かせる。


「実は母さんは軍隊に入るのが夢だったのよね。けれど、魔力も少ないし、魔術師学校にも通えなくて……階級は魔法使いだし、諦めたの」

「父さんも、魔術師になりたかったなぁ。でも、俺はもともと身体(からだ)が弱かったし、魔力も中途半端だった。もちろんまともな教育も……」


 両親はそこで会話をやめ、再びこちらをみた。

 二人で私の目線に合わせてしゃがみ込むと、肩に手を置く。


「だから、クレアが強い魔力を持っているとわかって……きちんとした教育を受けて欲しかったんだ。けど、うちに魔術師学校に入れさせてやれるお金はない。あの軍人さんによれば、魔力の操る実力さえあって入隊試験に受かれば、無事軍隊に入れるそうだ。軍隊に入れれば、きちんとした訓練が行えて、強い魔力の扱い方も教えてもらえる」


 そう言った父さんの目は、とても強くて優しくて。

 けれど、何処か不安げで……なにも言えなくなってしまった。


「クレアの力をこのまま何もしない状態で放置しておけないんだ。わかってくれ」

「うん……」


 唐突な事についていけない。

 けれどそれは確かに私を想ってくれているという事で。

 あまりの強い思いに、私は頷くことしか、できなかった。


「これからクレアは魔術師としてやっていくのだから、母さんたちから贈り物があるわ」

「贈り物?」


 真剣な話から一変して両親はニコニコと嬉しそうな顔をすると、後ろを指差した。

 その先にいたのは……。



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