ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
大空から遮るものがなく、さんさんと大地に降り注ぐ太陽の光を全身に浴びて、キラキラと輝いている榛色の翼に、目を奪われた。
鋭く光る、二つの琥珀。
キレイな瞳……。
引き締まったたくましい足は、しっかりと大地を踏み締めて、バサリと羽ばたいた翼が風を巻き起こし、私の蜂蜜色の髪を揺さぶった。
「鷹(たか)……?」
「ええ。あなたの使い魔となるはずよ。 私たちが最高級の〈使い魔売り〉に頼んだのよ」
母さんが私の背中を押した。
確かに私にはまだ使い魔はいないけれど、勝手に決めるなんて。
10歳の誕生日に街にでて、使い魔屋に行って見つけようねって話してたのに。
本人たちが会わないと、本当に真の使い魔かどうかなんてわからないのにこの両親は……やっぱりどこか浮かれているのかも。
鷹に近づくことを渋っていると、父さんが満面の笑みで手招きする。
「これから相棒になるんだ。挨拶しなさい、クレア」
「あっ、挨拶!?」
鷹に!?
しゃべれないじゃない、相手は動物なんだから。
使い魔については学校で習ったことはあるけれど、それはとても抽象的で、使い魔との会話の仕方など教えてはくれなかった。
どうやったらいいか、わからないし……。
混乱しても、お父さんたちはニコニコしているだけだ。
どうすれば、いいのよ。
仕方なく鷹を見つめると、鋭い視線が私の瞳を貫いた。
その刹那、電撃が全身を駆け抜けた。
なに、今の……。
どく、どく、どく、と鼓動が激しく耳の奥で鳴った。
そして、何故か。
「──おいで」
腕を、鷹へとゆっくりと伸ばしていた。