ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉


「よし!久しぶりに空を飛ぼう!」


 涙がなくなり、目の赤みが引いた頃、私は久しぶりにショウに提案する。

 ショウも同意して、彼を支えながらなんとか外に出た。

 この季節には珍しい、冷たい空気が肌を刺す。

 繋いだ手から魔力を注ぎ、名残惜しくも指を解く。

 ショウが背後から覆いかぶさるようにして私を包む。

 一度だけ、腕に力が入って強く抱きしめられた。

 小さく息を吐く。

 久しぶりの感覚。

 例えようのない安心感。

 
「いいよ、ショウ」

「いくよ」


 彼が魔力を集中させ、そのときが来るのを待った。

 やっと空を飛べるんだ。

 ショウと、一緒に。

 心の奥底から、嬉しくて、わくわくして、空を見上げた。

 あいにく、どんよりとしていて、今にも泣き出しそうな空模様だ。

 なんで、ショウと久しぶりに会えたときに雨空なのよ。
 

「なに……?」


 動揺した声とともに、肩にのしかかっていた腕の重みが消える。

 
「どうしたの!?」


 慌てて振り返るけど、そこにいるのは変化していないショウの姿。

 もしかして……。


「翼に、変化できないの……?」

「──そんな」


 彼は、信じられないと言った風に喘いだ。


「どうして……」




 
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