ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
私の背に残っている、蛇に傷つけられたミミズ腫れのような傷痕。
これは、いくら治癒魔法をかけても、治らなかった。
いや、そうじゃない。
特殊な魔力の入った毒だったのか、私の傷痕は魔法を受け付けず、すべて跳ね返してしまったのだ。
ショウも、きっとそうだ。
どんな回復魔力も目覚めさせる魔術も効かなかった。
バケモノに受けたキズのせいで、変化できなくなっちゃったんだ。
よくよく探ってみれば、魔力だって微々たるものとなってしまっている。
ショウに、何と言葉をかけたら良いか、わからない。
鷹になることもできなくなってしまったんだから。
もう、大空を自由に飛べない。
その翼は捥がれてしまった。
私の、せいで。
「ショウ……大丈夫?」
「……どうしてだ?」
「私、あなたの主として相応しくない。貴方を危険な目に合わせた。傷を負わせ、一年間も眠らせたままにしてしまった。そして、魔力だって……!」
「クレア」
「っ……!」
柔らかく優しい声が、聞いたこともないくらい低く、低く、響く。
彼の顔は見たこともないくらい、怖くて。
けれど、次の瞬間にはまた柔らかく微笑みかけた。
「クレア」
ふわりと、抱きしめられ、ぽんぽんと大きな手が頭を包み込んだ。
「泣かないで。いつから君はそんなに泣き虫になったんだい?」
「それは……」
「オレは何も後悔してないよ。君が負い目を感じることはない。君がオレから離れることはあっても、オレから離れることはないよ」
「そんなっ!私がショウから離れるなんて!こんなこと、あるわけない!」
ぼろぼろと大粒の涙は頬を伝って落ちていく。