ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
「どんなにすごい魔術師でも、大人っぽいって言われても、クレアはやっぱり子供だね」
「こど、もじゃ、ない!」
けれど、どんなに否定しても、それが余計に子供っぽく見えて、優しく微笑んで会話をしてくれるショウが、大人で、私を子供扱いするから、自分が子供であることを自覚する。
ああ、やっぱり彼の前では取り繕うことなど、できない。
「けど、クレア。これで君は何の役にも立たないオレを使い魔として本当にいいの?もう、空を飛ぶことも、できない」
微笑んでいるけれど、心の奥で彼が考えていることなどお見通しだった。
「私、別に気にしない。確かに、ショウと空を飛べなくなったのは、ちょっと寂しいけど、別に空を飛べなくなったわけじゃないわ。ほかに方法なんて、いくらでもあるもの。それに」
私はそういいながら、ショウを見つめて微笑んだ。
「ショウと一緒にいられるなら、それでいい」
これは、私の紛れも無い本心だ。
ショウと一緒にいられるなら、空を飛べなくても大丈夫。
空を飛ぶことが好きだったのも、ショウが翼になっていたからだ。
ショウが翼だから、空をムチャな格好で飛んでも安心していられたんだ。
彼が翼だと、全身を優しさに包まれているようで、どこまでも飛んでいけそうだった。
「クレア」
「えっ」
ショウが私の名前を呼んだかと思うと、ふわりと抱き寄せられた。
「オレも、クレアがいてくれるなら、それでいい」
そう耳もとで囁いた。
自然と頬が緩み、にやけてしまう。
私は身体を回すと、自分からショウのたくましい身体に抱き着いた。
「これからも、ずっとずっと一緒にいてね!」
「ああ」
ショウは、鋭い瞳を細めて微笑んだ。