ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉
〈ショウ、か。 いい名だね〉
優しい声。
鷹──ショウは、目をわずかに細めて微笑んだ。
鷹に微笑んだ、っていうのもおかしいのかもしれないけれど。
喜んでもらえた。
よかった……。
心の底から安堵する。
「どう? 仲良くなれた?」
母さんが、私の肩を叩く。
私は母さんに向かって微笑んだ。
「ええ」
「クレア」
父さんが反対の肩を叩く。
「なに?」
「軍隊に入るのは、15歳からだが、クレアならいけるはずだ。だけど、それはあと一年たったらでいい。まだクレアは9歳だ。10歳になったら、軍隊入隊の試験を試してみろ。それまで、その鷹──」
「ショウよ」
「ショウと絆を深めるといい」
くるっ、とショウが返事をするように鳴いた。
私はもう一度、ショウの琥珀色の瞳を覗いた。
これからよろしくね。
私は、心の中でショウにまた挨拶をした。
〈こちらこそ、よろしくね〉
脳内には声は響いていないはずなのに、そう聞こえた気がした。