Knights of the Round
「奪ってしまえばいいではないか」

そんな声が突然響き、ランスロットは思わず振り向いた。

そこに立つのはモルドレッドの姿。

「恋の悩みとお見受けしたが?」

「な、何を…」

「武勇でも騎士道を守る心でも円卓の騎士の中で並ぶ者がない、屈強な騎士のランスロットをそれほどまでに苦悩させるのは、恋い焦がれる女性の事以外にあるまい」

ゆっくりと近付いてくるモルドレッド。

「どこの御婦人を想っておられるのかは存ぜぬが」

その声が、ランスロットの耳元で囁く。

悪魔のように。

「奪ってしまえ」

「!!」

驚いたように振り向くランスロット。

「女とは押しに弱い生き物だ。お前ほどの誉れ高き騎士に言い寄られて、何が不幸なものか」

「し、しかしあの人は…」

「どのような立場であろうと、あれも我も人だ。人ならば恋には抗えぬ」

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