【短編】笑顔の行方
「なぁ、昼に悪いもんでも食った?」
「……ううん」
「あっ! 分かった。オレがいなかったから淋しかったとか?」
「……別に……」
そう答えるわたしに訝しげな表情を見せる竜也。
なんでそんな表情をするのかは、わたしにも分かってる。
『食った?』と聞かれれば、『食ってないわよ!』って。
『淋しかった?』と聞かれれば、『淋しかったのー』って
冗談で言えてるはずなのに……。
それが言えないでいる。
告白する勇気もないし、このままでいるのもどうかなって思うのも事実。
深夏の言うとおり、言わなきゃ分かんないけど、
やっぱり、竜也目の前にすると、言えない。
こうやって話すことだってうれしいくせに、気に障るような言い方しちゃうし……。
だったら、大人しく……って思っても、竜也は変に思うだけだし……
わたしだって、何ともならないよ。