【短編】笑顔の行方
「ったく、しょうがねぇなー」
あまりにも寒いって連呼するわたしにため息をついて、
竜也は自分のカバンの中からマフラーを出して、わたしにかけてくれたんだ。
いつも竜也が首に巻きつけている黒いマフラー。
ほのかに竜也の香りがする。
ものすごく竜也が近くにいる気がして、体が熱くなる。
寒さなんて一気に吹っ飛んだ。
ものすごく自然な竜也の行動に何だか恥ずかしくなって、顔を背けた。
絶対、顔、赤いもん、わたし……。