【短編】笑顔の行方
笑顔の行方
この状況が何なのか、理解できずに、なされるがまま、わたしは抱きしめられていた。
竜也の腕の中で石のように固まったままのわたしの体。
竜也の顔すら見えない。
耳元で聞こえる竜也の吐息が熱い。
「花澄……」
竜也に名前を呼ばれるだけで、ドキンと胸が鳴る。
初めてこんな近くで聞く竜也の声……。
わたしの名前…………。
ドキドキしすぎて、汗がにじみ出る。