【短編】笑顔の行方
「寒いし、帰るか?」
「うん……」
冬の風にさらされて冷えた竜也の手がわたしの手を包み込む。
見上げた竜也の顔は、わたしも見たことがないやさしい顔。
きっと、わたししか知らない竜也の顔。
これから、そんな竜也のわたししか知らない顔が増えてくんだよね?
竜也の笑顔、独り占めできるんだよね?
「ん?」
不思議そうにわたしを見る竜也。
「ううん、帰ろう」
ギュッとつながった二人の手が温かくなる。