【短編】笑顔の行方
「あ……」
「何?」
竜也が再び不思議そうにわたしを見る。
「マフラー、ありがとうね。さっき、言いそびれたから……」
わたしの首元で揺れる竜也の黒いマフラー。
確か、中3の時にお姉さんから買ってもらったやつ。
欲しかった何とかっていうブランドのだったよね?
「ああ、いいよ。それ、花澄にやるよ!」
「え?」
「いらない?」
「い、いらないことない!」
ブランドのことは分かんないけど、竜也が持ってたものだよ?
いらないわけがない。