もう、泣きたくない
初出社は、なんと面接の次の日。
そこまで人がいないのか。
と飽きれていたが、出社して分かった。

この会社は社長を含め、7人しかいなかった。
社長、綺麗な女性、ちょっとハゲた男性、明らかに私より年下のイケメン2人に、性格悪そうな人相の男性に、例の眼鏡。

まず目に入ったのはやはり、1人の女性。
うわ〜綺麗な女性。私と同じくらいの歳かな。仲良くなれると良いんだけど…
ちょっと目がキツいが、身長の高いスラッとしたストレートの髪の長い女性だった。

このハゲた男性は…ん〜私より少し年上?でも優しそう。
この男性も背が高く、がっしりした身体つきで、力がありそうな感じだった。

そしていかにも遊んでいそうなイケメン2人。
タイプは全く違い、1人はワイルド系、もう1人はジャニーズ系で、目の保養にはなりそうだった。
それから人相の悪い男性。これはパス。
私は第一印象で中身がだいたい分かってしまう。というか決め付けてしまうため、ダメだと思ったら、ダメ。

眼鏡…割と背が高いんだな。
2度会って、今日初めてまともに見たかもしれない。
社長に名刺をもらった時はよそを向いていて、面接の時はずっと下を見てたっけ。
思ったより優しそうだった。頼りないなぁ…なんて思ってたけど。
社長は、…ただの定年前のおじさんだな。

私の感想はそんな感じ。

みんなが私の前に一列で立ち、自己紹介した。

「吉田笑子です。よろしくお願いします。」

するとみんな恥ずかしそうに下を向き、
「お願いします!」
とみんなが言ってくれた。
そしてみんなが散って行く中、1人の社員が
「部長!これどうします?」

部長?振り返るとそこには眼鏡が。
え。この眼鏡が部長なの?
まぁ、こんな少人数じゃ、年齢順だよな〜…なんて思ったりした。
そういえば眼鏡はいくつくらいなんだ?
と眼鏡の方ばかり見ていたら今度は
「しーちゃん、こっちの書類もみてよ」
しーちゃん??なにそれ。会社でそんな呼び方ありか?
言ったのは、あの目のキツめで綺麗な女性。
…が、何故にしーちゃん?
わけが分からなくなり、ボーッとしてると、
「ほら、吉田さん…吉田さんて似合わないね。笑ちゃんでいい?」
と眼鏡が私にいってくるではないか。
は?笑ちゃん???
「いいですね〜笑ちゃんにしましょう!可愛いから!」
と、ワイルド系が続く。

おいおい。一体なんなんだこの会社は。

すると女性が寄って来て
「私、りえ。ヨロシクね!あの人はわたしの婚約者なの!」
えーーーー!あの眼鏡に婚約者?しかもこんな綺麗な女性が?
だからしーちゃんなんだ。
にしても驚きだわ。あの地味で頼りなさそうな男性が部長で、婚約者までいたとは。

「はぁ…よろしくお願いします。」

りえという女性は、私の2つ上で、仕事も熱心に教えてくれた。
私は少し安堵したが、私が慣れたら、りえさんは仕事を辞めるらしい。
寿退社ってやつだ。
あの眼鏡とねぇ…私なら絶対選ばないな。そんなこと、どうでもいいか。
と、頭の中グルグルしながら、あっという間にその日は終わった。

しーちゃん。眼鏡の名前は、藤本忍という、ちょっとカッコいい名前だった。
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