BLUE STONE 壱




『レツっ……ありがとう』



「私を拒絶しないでくれて
ありがとう」と気持ちを込めて
言ってみたお礼をレツは
どう捉えたのかわからないけど


私を見た後 短く「あぁ」とだけ
頷いてくれたレツ


やっぱり彼は優しいー……
しばらくのあいだレツに
頭を撫でられていて
最初とは比べられないほど
穏やかな雰囲気が漂っていた


とその時、トントンと
ノック音の後に遠慮がちに
部屋に入ってきたショウシ


「あ、お取込み中じゃなくて
安心したよ、レツ、ケイちゃん」


といつも通りにニコリと
垂れ目がちな瞳をさらに垂れさせる


レツはそんなショウシをみて
舌打ちをかますと
私の頭から手を離し
近くの黒い皮ソファーに
深く腰を掛けた


そんなレツを見ていれば
ふと思い出すさっきのこと
あ、ショウシはさっきの女の話で
なんと思っただろう


とやがてきた不安に
胸を締め付けられる


そんな私の心を読み取ったのか。


「俺はケイちゃんを拒まないよ」


と優しい音色で言ってくれた


『……え?』


驚きのあまり目を見開くと
ショウシはそんな私を見て
クスッと笑うと口を開けた


「それがケイちゃんの本心じゃないことくらい俺はわかってる。
もちろんーー…レツもね」


とウインクしてみせるショウシに
またもや涙腺が破壊寸前で


そんな私を見てショウシは
クスクス笑う。





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