この道の先に…
梨紗自身も何が起きたのかわからないまま、ただ立ち尽くしていた。  
           
そして、目を離すことができなくて、その人だけをずっと、見つめていた。          
           
ただシュートの練習をしていただけ。     
今日初めて見た名前も知らないその人に、梨紗の心は惹き付けられていた。          
           
体の中を、やわらかな風が吹き抜けたような感じで、
その心地良さは、梨紗が今までに経験したことのないものであった。  
           
放課後の騒々しさも耳に入らず、まるでそこだけ時が止まったような感覚に陥っていた。    
           
「…梨紗!りぃーさっ!」          
絵里の声でハッとする。
           
現実に戻された感じがした。         
           
「そろそろ行こうかって……聞いてたぁ?」  
           
3人は体育館をあとにした。         
           
ほんの数分が、梨紗にはとても長く感じられた。
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