この道の先に…
「もうヤダ…」
           
つぶやきながらゆっくりと立ち上がると幸輝に近付いて腕を掴んだ。

「もうヤダ!私だよ!梨紗だよ!…早く思い出してよ!」
           
掴んだ腕を前後に揺さぶり、幸輝の体を揺らしながら泣きわめいた。涙で幸輝の顔は見えない。今までこらえていたものが溢れ出して、止めることなどできなかった。
           
「ねぇ、思い出してってば!お願いだから…ねぇ!」
           

「ちょっと梨紗ちゃん!落ち着けって!」  
           
その時ちょうど帰ってきた健司に止められた。
           
抑え切れなくなった梨紗の思いも、幸輝には届かなかった。

もう無理だよ…。   
           
「帰るね。…幸輝……さよなら……」
           
玄関まで来た健司に、
           
「ここにはもう来ない…。いろいろありがとう」

そう言ってドアを閉めた。
           
終わらせてしまった…。
           
< 150 / 200 >

この作品をシェア

pagetop