この道の先に…
幸輝と初めて話した時のように心臓がバクバクしている。      
           
幸輝が来た。
           
2カ月ぶりに見る愛しい人の姿に、涙が出そうになった。       
           
ここで泣いてはいけない。
           
そう思いながら、梨紗はソファーから立ち上がる。
           
「あ…」
           
と言って幸輝は梨紗の前に立った。      
まっすぐに梨紗の目を見ている。       
こんなふうに幸輝に見つめられるのは本当に久しぶりで、恥ずかしくなってしまった。     
           
もしかして…私のことがわかるの?
           
そんな期待も、幸輝が次に口にした言葉で崩れさった。        
           
「佐倉さん……また来たんだ」
           
その言葉を聞いて梨紗はうつむいて、納得したように微笑んだ。
           
幸輝の後ろでは健司が目を閉じて、ため息をついている。
           
< 162 / 200 >

この作品をシェア

pagetop