この道の先に…
笑いながら答えた良平。

「近くで事件があって、犯人が捕まってないから……気をつけて帰るように…って…さっき先生が…」

拓也の言葉で、そこにいた全員が凍りついた。


その直後、走り出した1人の背中を、みんなが『え??』という気持ちで見ていた。

走り出したのは、拓也ではなく、良平でもなく…
幸輝だった。

「なになに?これって……そういうことぉ!?」

沈黙を破ったのは絵里だった。


幸輝は、無意識のうちに走り出していた。

梨紗のことだけを思って必死に走っていた。

梨紗の笑顔が浮かんでいた。

校門が近づいてきた時、1人の女の子が入ってくるのが見えた。

それは、梨紗だった。

梨紗は、前から走ってくる久しぶりに見る先輩にビックリして立ち止まった。
幸輝も、梨紗の前で足を止めた。

大好きな先輩が、
想いが届かなかった先輩が、
どうして今、目の前にいるのか。
どうしてこんなに息を切らせて、ここに立っているのか。
梨紗には、訳がわからなかった。

幸輝は何も言わない…。

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