この道の先に…
歩き出した梨紗は、どんどん速足になって、気がついたら走り出していた。必死に走っているのになかなか進まないような、夢の中で走っている感覚で駅に向かっていた。
           
電車で2駅がとても長く感じた。       


初めてキスをした時のこと。
一緒に花火をしたこと。
想いが届いた日のこと。
名前を知っててくれた嬉しさ。
初めて話した時のこと。
そして、体の中を風が吹き抜けたような、あの瞬間のこと。      

電車の中で、梨紗は思い出していた。     
           
好きになった人に、自分の気持ちを受け入れてもらえることは、とても幸せなこと。

それだけで幸せだったはずなのに…どんどん欲張りになって、もっと一緒にいたい。側にいたい。みんなみたいに私も…って。         
どうか、幸輝くんが私のこと、もうどうでもいいやって思っていませんように。

駅に着いて電車を降りると、梨紗は再び走り出した。

幸輝くんが家にいるとは限らない。電話をすればいいことだけれど、今のこの気持ちは電波を通してなんかでは伝えられない。家にいないのならば、会えるまで待とうと思っていた。
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