君とともにこの傷を



彼の肩を私は背伸びをして優しくたたいた。

ゆっくりと彼の顔がこっちへと振り返る。

やっぱり…

昨日、目があった人だ。

私は彼が落としたハンカチを何も言わずに彼の目の前に差し出した。

一瞬、びっくりしたように固まっている彼。

でも、すぐに口が動いた。

「俺、もしかして落としてた?」

低くて優しそうな声だった。

そんな彼の言葉に私は少し微笑んでうなずいた。


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