ただ君だけを。

コンコン――――




自室のベッドに潜り込んでいると

誰かが、私の部屋の窓をノックする。

誰か。なんて言ってるけど、

ここは、二階。

そんなことが、出来るのは

ただ一人。





優だけなんだ。



私達の家は、隣同士で、

窓を開けると、いつでも、直ぐに、

優の部屋に、私の部屋に、

お互いに入ることができる。


私は、窓を開ける。

「よお。」

「…何しに来たの?」

「いや、数学の教科書貸して?」

「…はぁ?」



「ほら、宿題でてただろ。」

「出てるけど、なんで?」

「学校に忘れてきた。」




あー、なるほどね。



私は、鞄をあさり

「汚さないでね。」と言いながら

教科書を手渡す。



「分かんねぇんだよなぁ…。あの公式。」


そう言って、乱暴に頭を掻きながら

面倒くさそうに呟いた。


「教科書サンキューな。

終わったら、帰しに来るから。」







「…待って。」


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