ハイドアンドシーク・ラブ
本条秋(ほんじょうしゅう)先輩。


もとは剣道をやっていたらしい。


真っ直ぐな黒髪で、比例した黒い目。
優しくて、面白くて。




目で追うことがある。
私以外の女子と話していると嫌だ。
一緒に居たい、話したい。


──でも。


ずっと思い浮かべているワケじゃない。
従順になれそうにない。




恋とか、分かんないよ。
習ってないよ。




──でも、たぶん好き。




「みっつ、ネット張りに行こう」


「あっ、はい!」




先輩に言われ、更衣室を出る。


コートへ戻ると、男子も数人来ていた。




「あ、みっつー」




私の方に駆けてきたのは男子と話していた同学年女子、泉未来(いずみみらい)。



正直言うと私はこの子が嫌いで。






それは、この子がナルシストだからか、秋先輩と仲がいいからか。






「ちょっと泉ちゃん、来たならはやく着替えてよ」

「あーすいませーん」




遥南先輩の注意に対して、小馬鹿にしたような返事をする泉ちゃん。



やっぱり嫌い。





「なんなの、泉ちゃん」




先輩もあんまり好きじゃないみたい。

私の目には単なる男好きにしか写らなくて気色悪い。


私の悪い心なのか、それとも本当に嫌な人なのか。





前者だと、私が先輩を好きだと肯定しているようで、後者にしたくなる。
でも、それはそれで自分が悪い人みたいで……。






「もう、分かんないよ……」
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