Winter Sinter
03.Lyrics
ー放課後ー
「マリア!」
「すみません!遅くなって…」
「いいよ、今日は歌詞もらうだけだし。あ、でも少し読ませてもらっていい?」
「はい!」
この人はMariaのボーカルのリリアさん
基本的に仮の歌詞をリリアさんに見せ、訂正を加えてもらいながら、最終チェックをメンバー全員にしてもらって採用になる
「…うん!今回もいいね!ほとんどこのまま通したいよ!」
「本当ですか?!やった!今回もすごい考えてー…サビのここよくないですか?……」
「……やっぱり今回もCDに名前は載せない?今回は6曲も入ってるミニアルバムで歌詞もマリアが全部書いたし…マリアの名前も…メンバーみんな望んで」
「リリアさん
いいんです。今人気出てきてるのに今更歌詞は違う人が書いてるなんて知られたくないし…名前知られて勘ぐられるのも目立つのも苦手だし
私はこうやって居場所があるだけで幸せです」
「…そっか…………でも!!気が変わったらいつでも言えよ!俺らはメンバーなんだから!」
「はいっ!ありがとうございます!」
「じゃあ今日はここまで!また明日の夜ミーティングあるから!お疲れ様」
「お疲れ様でした!」
本当は
たくさんの人に知ってもらいたい
"私の書いた歌詞だ"って
自分の存在を知ってもらいたい
でも…
いつからか人前に出るのが怖くなった
好奇心で人の心に土足で入る人間が苦手になった
(高倉さんのお姉さんの方、病気ですって)
(一生治らない感染症で)
(植物状態らしいわよ)
(なんでも髪の毛が無くなって痩せてミイラみたいになって)
(やだわぁ、うちの子に伝染ってたらどうしましょう)
(死ぬのかしら…)
………
気持ちがぐちゃぐちゃになっている
落ち着かないと
「ママァ!ちょうちょ!」
「あら、ほんとね」
東京の
たくさんの人が行き交う汚いこんな街に
蝶が…
「いつか夢見た青く輝く、蝶みたいに飛べたら、何かが変わる気がした…」