Winter Sinter

ー次の日ー


最悪…どうしよう…お腹痛い…クラクラする………生理痛だ……

今日は新曲の歌詞を完成させて提出…
あれから1週間もらってるから持っていかないと…迷惑かかっちゃう…



ヒラリ…


「何これー?誰のー?」

「美香、何それ?プリント?」

「誰かの落とし物みたい〜んとね〜…………………ハハッ!何これ?"いつか夢見た青く輝く蝶みたいに飛べたら何かが変わる気がした"?なんなのこれ〜なんかの歌詞?」


なんで?!美香ちゃんが…
あ…歌詞書いてた紙落としたのか……

でもアレは未発表だから今見られても何かわからない
彼女達がMariaを知っているかわからないし
タイミング見て返してもらうか、最悪捨ててくれれば…


「美香ちゃん、それ誰かの落とし物なんだから何も声に出さなくても…」

「えー?だって名前書いてないもん。誰のものかわかんないなら内容言えば本人が取りにくるでしょー」

「お前本当性格悪いなー」

「吹雪!うるさいなー男子は黙っててよ!」

「あれ?美香ちゃんこれ、後ろにも書いてあるよ」

「まじ?後ろもこんなんなの?」





…やばい!Re:futureの下書き!!
あれはランキングで1位にもなってるからわかる人が読んだらばれちゃう!!

「あの!!それ………あ………」



ガタン!!


「高倉さん?!」
「おい!大丈夫か!!」




…………………








「高倉?…よかった!気がついた!」

「佐沢…くん…ここは…」

「保健室だよ。高倉、教室で倒れたんだ」


倒れたんだ…
紙、どうなったんだろ…


「もう授業1限だけだし顔色悪いから先生が早退しろって。雪が荷物取ってきてくれるから」

「そっか…ありがとう…」

「いいよこのくらい。あ、来たかな」


ガラッ

「おまたせー!」

「佐沢さん、ありがとう」

「気にしなくていきよー!それより名前覚えててくれたんだね!嬉しいよ高倉さん!雪って呼んでよ!」

「う、うん…えと…雪ちゃん…さ、佐沢君も本当にありがとう」

「俺も吹雪でいいよ」

「なんか、雪ちゃんと…吹雪くんって2人とも冬の名前だね」

「高倉…知らなかった?俺たち双子だよww」

「え?!?そうなの?!知らなかった…」

「多分知らないの高倉だけだよwでもまぁ見た目も似てないから話さない相手だとわからないよな。見た目以外だったら雪とは趣味とか好きな食べ物、好きな音楽は一緒なんだけど…」

「あ!好きな音楽で思い出した!この紙…もしかして高倉さんの?」

ガサガサ…

「クラスの人、誰も気に止めて無かったしもしかしたら高倉さんのかな?って勝手に思ったんだけど…この裏の"Lucid Lily"ってMariaの歌詞だよね?!高倉さんも好きなの?!ゆき、Maria大好きなんだぁ♡」


「う、うん、私もMaria好きだよ…ゆきちゃん、さっきは美香ちゃんのこと止めてくれてありがとう…」

よかった。まだ私が歌詞を書いてるって発想には至らなかったみたいだ


「気にしないでー!美香ちゃんいつもあんな感じだから!それより…こっちの歌詞は?他のバンドの歌詞とか?」


「あ…えっと…」


どうしよう…言い訳が思いつかない…




「これ…高倉が書いたんじゃねぇの?」

「えーー!!そうなの?!すごいね!!」

「うっ、うん、まぁ…そういうのちょっと得意というか…趣味というか…」


「すごいなー!ゆき、すごい嬉しい!!大好きなMariaの歌詞を書いてるのが高倉さんだったなんて!」



「…………………は?!え?!なんでわか…そうなるの?!」

「え?…うーん…何年もMariaのファンやってるとわかるよぉ〜!曲はいろんなジャンルを取り入れて、いろんな人が聴きやすいようになってて…でも世界観は見失ってなくて、その中で歌詞がすごく心に残るもん。Re:futureとかLucid Lilyみたいにその歌詞も、すごく心に残ったから…」

「ゆき…お前今ものすごく痛い子だよ…」

「なによー!いいじゃない!もうCD貸してあげないよ?!」





心に…残る…?





「だ、だからね!歌詞見てわかったよ!この"Butterfly Effect"、すごくMariaっぽいし、でも新しい感じがしてゆきはすごい好きだよ♡!特にこの"いつか夢見た青く輝く蝶みたいに飛べたら何かが変わる気がした"ってとこ…………え?!高倉さん!どうしたの?!」



涙が
止まらなかった



「ごめんね!ゆき勝手に読んじゃって…で、でも高倉さんが書いてるなんて誰にも言わないし!!」

「違うの…嬉しいの…


ファンレターとか…読むけど…いつもMariaのLIVEの感想とか曲自体の感想ばっかりで羨ましくて…
秘密にしてるのは私だから、こんな事言うのおこがましいけど…
何も伝わってなかったらどうしようって…


でも…私の詞…届いてたんだね…」


「…自信持てよ。Mariaの曲を、お前の歌詞を楽しみにしてる奴は今や日本中たくさんいるんだ。雪みたいにお前の詞を好きな奴だって大勢いる。俺達は音楽業界の事はわからないけど、お前だってMariaのメンバーだろ。表にたてなくても、しっかりメンバーを支えてるだろ。

もう"趣味"じゃないだろ?たくさんの人にお前のすべてを伝えたいんだろ?だったら今まで以上に自分の居場所で叫び続ければいいんだよ」


「…うん…ありがとう…」

「吹雪もMaria好きだもんねー?」

「うるせーよ!」

「それに安心して!高倉さんが秘密にしてるならゆき達も絶対言わないから!」

「ありがとう…ゆきちゃん…」





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