シャッターの向こう側。
 そうですよ。

 だいたい宇津木さんは楽しいかもしれないけれど、私は楽しくない。

 叩かれたり、厭味を言われたり、首を絞められたり……

 それを楽しいと思えたらすごいんじゃ?

「…………」


 でも、物凄く嫌な訳でもない。


 訳でもないって……

 私は変態か……!?

「ないないないないっ!!」


 思いきり首を振ると、加納先輩の腕を掴んで歩きだした。


「私、和食が食べたいですっ!」

「あ。うんOK」

 そんな感じで加納先輩には、焼き魚定食を奢ってもらい。

 スタジオでフードコーディネーターがいない食品を好き勝手に撮らせてもらったりして、大いに楽しんだ後。

 今日は直帰と心に決めて、佐和子を呼び出した。








「それで、何か問題でも?」

 何故か今日は烏龍茶の佐和子が、目を細めて私を眺めている。

「ううん。何にも問題はないよ」

「問題がなきゃなんなの。あんたは遊ぼうよ~って誘う時はあるけど、飲みに行こう! って誘うのは稀なのよ?」

 そんなもの知らん。

 だいたい、自分でもよく解ってないことを人に相談できるかぃ。


 ……いや。


 本当は解っている。

 解っているけど、これは相談すべきなのかが解らない。

「ねぇ、佐和子」

「なぁに?」

 美味しそうに焼けた焼鳥を、指先で回しながら首を傾げる。

「私と坂口さんの関係って、おかしく見える?」

「そうね」

 即答!?

「……ど、どういう風に?」

 聞くと、佐和子はふっと息を吐き、烏龍茶を飲み干すと人差し指を立てる。

「まず第一に」

「うん」

「あんたと坂口さんて、接点がない」

 ……まぁ。

 そりゃ、他の部署だし。

「言っておくけど、これは以前の話をしている訳じゃないわよ? あんた、現在お付き合い中の割に、何故か坂口さんと一緒に歩いてるの見たことないわ」
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