シャッターの向こう側。
「それは……佐和子がまた違う部署だからじゃ?」

 ぶつぶつ呟くと、佐和子にジロリと睨まれた。

「あんたね~。坂口さんてモテるのよ? そんなカップルをまわりが放っておくはずがないじゃないの」

 んん?

「私は個人については余り興味ないけど、中には興味津々の人がいるの。そんなよた話を聞いてると、あんたは明らかに変」

「へ、変?」

「普通、付き合い初めのカップルなんて、それこそベタベタしてるもんよ」


 いや、だって……ねぇ?

 坂口さんは年上だし。

「どっからどう見ても、あんたって、宇津木さんとベタベタしてるじゃない」

「ぶっ……!!!」

 思いきりカルピスサワーを吹き出した。


 べ……ベタベタって。


 私と宇津木さんが……!?


「冗談じゃないわよ! どこがどうベタベタしてるって言うのさ!」

「どっから見ても。まぁ、私が見る感じだと、あんたは本気で痛がってるけど」

「当たり前! マジで痛いんだよ! 殴るし、蹴るし、ファイルの角は使うし!」

「それはいいとして第二に」

 いいとしないで欲しい所だけど、佐和子が二本目の指を立てたので黙る。

「あんた、宇津木さんの話しかしない」

「は?」

「前々から思ってたのよ。あんた、ここ一年というもの、宇津木さんの話題しか出してないのよ」

「私が?」

「そう。あんたが」


 記憶にございません。

 ……でも、何となくは解る。

 宇津木さんの隣の席になったのは一年前から。

 つまり、一年前から彼の仕打ちに耐えて来ている訳で……

 しかも私って他部署の仕事ばかり手伝って来てたから、他に話題がないというか。

「だから、あんたって宇津木さんが好きなんだと思っていたら、坂口さんと付き合うって言うし。正直、驚いたわ」

 私も、そのコメントには驚いた。

 ポカンとしていたら、佐和子は苦笑して私の手から焼鳥を奪うと、それを黙々と食べる。


 えぇと……
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