シャッターの向こう側。
 好きとか嫌いとか言われると、宇津木さんは……

 だって叩くし、蹴るし、足は踏むわ首は絞めるわ。

 睨むし、からかうし、キツイ事を言ってくるし。

 どっちかと言うと大魔神だし、怖いし……

 でも、この間は妙に温かかった……


 仕事でイライラしていた時でもあったし、宇津木さんのやり方は驚いたけど、とても楽しかった。

 注意を受けたは受けたけど、納得出来る注意は、私のミスだし。


「私はどうしたいんだろ」


 ポツリと呟くと、佐和子が片頬を膨らませた。

「あんたは坂口氏を選んだんでしょう?」

「うん」

 嬉しかったから。

「なら、宇津木さんより、坂口さんをちゃんと見てあげればいいじゃない」

「うん……」


 そう……なんだよね。


 宇津木さんとは仕事の関係上で一緒にいることが多いし、今は忙しいから変な風になっちゃってるだけだと思うし。

 仕事が一段落したら、ちゃんとお付き合いらしいお付き合いって出来るよね。


 仕事と恋愛は別だし。


「なんか……整理整頓出来た感じ」

 ポツリと呟くと佐和子は眉をしかめたけど、特に何も言わずに烏龍茶のグラスを掲げてくれた。

「それで、一つ質問があるんだけど、佐和子さん」

「何よ、改まって」

「有野さんって、何者?」


 佐和子の顔は見物だった。

 急に赤くなり、かと思えば青くなり。

 それが咳払い一つで真顔を作る。


「来週になったら、いろいろ決めるわ」


 ……決める?


 決めるって何を……?


「これ以上は、今は聞かないで」

 きっぱり言った佐和子の表情と声音に、黙って頷いた。

「じゃ、最近の面白い話を聞かせてあげるよ」

 そう言って、話題を加納先輩から聞いた失敗談の話にすり替える。

 佐和子との会話は楽しいけど、どこかやっぱりスッキリとしないまま。















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