シャッターの向こう側。
「まぁ……宇津木さんが絡んでいるんですし、私にああ言った時点で、ある程度覚悟していたんじゃないですか?」


 危ない奴とか、おかしい人呼ばわりはアレだけれでも。


「宇津木になんて言われてたの?」

 坂口さんが訝しげに腕を組んだ。

「スタッフとか他部署の人に何を言われようが、気にするな。責任は俺が取ってやるって」

 もうちょっと怖い言い方だったけど。

 カメラを仕舞い終わって二人を振り返ると、加納先輩はお腹を抱え、何故か坂口さんは難しい顔をしていた。


「…………」


 なんでしょうね……


「おかしな事を言いましたか?」

 加納先輩は頷き、何か言いかけて坂口さんに睨まれる。


 ……何?


「ま、宇津木君にしては上出来じゃない」

 加納先輩はニヤニヤとして、坂口さんを眺めているけど、さっぱり解らない。

「いいよいいよ。神崎ちゃんは気にしなくても全然いいよ」

「はぁ」


 ホント……何なんだろう?


「とにかくさ、無事に終了お疲れ様。後は良い絵が撮れてるといいね?」

 ニッコリ微笑む坂口さんに微笑み返す。

「大丈夫です。自信はありますよ~」

「へぇ? 俺もそれは早く見たい」

「ん~……白黒なら、すぐに自分で出来るんですけどね~。カラーは専用液がなくって」

「あ。やり方が違うんだ?」

「似たようなもんですが……カラーの場合は漂白しないといけないから専用の液がいるんですよ。じゃないと出来上がりが白黒写真みたいになっちゃう」

 それも、どちらかというとセピア色になるんだよね。

 古いカラー写真が、太陽にあたって色が退化するみたいなセピア色。

 なかなか良い味は出るけど……


「だから、私は白黒以外はプロに任せちゃってます」

「専用の液体を持てばいいんじゃ?」

 ん~……

 エチレンジアミン四酢酸鉄は保存するのが面倒だし、ポリカルボン酸アミン類錯体とか、タンクに置くには部屋が狭い。

 それに……カラー現像は自信があまりない。

 色むらが出てしまうのが問題と言うか……

 ここらへんを言っても、キョトンとされそうだしなぁ……
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