シャッターの向こう側。
「ちょうどお祖父ちゃんが縁側で昼寝をしている時に、猫まで一緒になって昼寝をしていてですね」

「うん?」

「まぁ……お祖父ちゃんは、自分の大口開けたドアップに私を怒ろうか、猫との構図を褒めようか、ひとしきり悩んだ後、七五三のお祝いにカメラをくれたんです」


 坂口さんが微かに吹き出した。


「そ、そう。いいお祖父さんなんだね」

「はい。私の師匠ですから」


 それはそれは、尊敬に値するお祖父ちゃんでございますとも!

 ニコニコしていたら、坂口さんがふっと真剣な眼をした。


「神崎ちゃん?」


「はい?」


 坂口さんは少しだけ躊躇った様に視線をさまよわせ、キッと私を見る。


「俺達って、付き合っているんだよね?」


 この間と同じ質問にドキリとした。


 そう。

 付き合っているんですよ、私たち。


 答えは、この間決めていた。


「そうですよ?」

 呟くと、ほんの少しだけ坂口さんが微笑む。


「安心した」


 ……何か、不安だったですか?


 その質問は言葉にしないまま、頬に手をかけられて上を向く。


 これで……


 良いんだよね?


 そっと重なった唇が、温かい。


「大切にするから……」


 そう呟いた坂口さんの向こうで、加納先輩の呼声が聞こえた………















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