シャッターの向こう側。
パステルカラー

デート……もしくは突撃

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 会社を退社しての、帰り道デート。

「最近、仕事掛け持ち多くない?」

 そう言われて考える。

「多いかも知れませんね。他部署の舞い込みは減りましたけど、その替わりに部内の仕事が増えたかも」

 これまでは余り部署の人は頼んでこなくって、なんとなく荒木さんが他部署の仕事をまわしてくれてたりしたんだけど。

「でも、楽しいですよ」

 ニッコリと笑うと、坂口さんは小さくガックリとして頷いた。

「楽しいのはいいことだよ。でも、会う時間が少ないと思わない?」

 会う時間?

 首を傾げると、坂口さんは自分の事を指差した。

「俺たち」

「社食でも会ってるじゃないですか」

 最近は佐和子と時間が合わなくてポツンと食べてることが多かったけど、気がつけば坂口さんが隣にいるのが当たり前になってきてるし。

 それに、残業さえなければ今日みたいに待ち合わせして遊んだりもするし。

 お互いに仕事しているから、それが普通じゃないのかな?

「あぁ~……なんとなく言うと思ったけど。神崎ちゃんて仕事し過ぎ。休日まで出歩いているでしょ」

 ん~……

 まぁ、出歩いているといえば出歩いている。


「この季節、緑がきれいで」

 写真を撮っていると楽しいっていうか……

「あ。趣味の方?」


 趣味というか……


「じゃあさ。キャンプに行かない?」

「キャンプですか?」

「うん。オートキャンプとかだとテントいらないし」


 オートキャンプねぇ……


「まず、休みが取れるか問題ですよね?」

「……まぁ、そうだね。広告はウェブとはまた一味違う時期に忙しいから」

 少し考える風に腕を組み、坂口さんはいきなり悩み始めた。

「まいったなぁ……でも、たぶんそうなんだろうなぁ」


 ……何がそうなんだろう?

 こっちが聞きたい。


 とにかく話は何故かうやむやのまま、週末の土曜日がやって来た。
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