シャッターの向こう側。
 見た目は普通……

 宇津木さんは冴子さんの前だと引っ込んでるけどSだし、冴子さんも間違えなくSだろう。


 …S同士って上手く行くのか?


 ともかく、宇津木さんって迷惑そうな顔をしながらもちゃんと冴子さんの言う事を……てか、命令を聞いてる。

 出張中にも電話に出てたし、冴子さんを最優先にしてるのは間違いないよね。


 それを言ったら……私達の方がおかしなカップルになるかも。


 坂口さんはどうだか知らないけど、私の中での比重はどちらかと言うと仕事寄りになっている様な気がする。


 だって……

 最近はフードコーディネーターの人にもスタイリストさんにもブツブツ言われないし、加納先輩や宇津木さんはとても自由に撮らせてくれる。

 まぁ、確かに無言の差し戻しやちょっとした要望は出て来るけど……

 今、とっても仕事が楽しかったりする。



 ……だから、自然とそのノリでプライベートでも撮影しに行っちゃったりして、会う機会が減ってるのも確か。

 だけど、これは私がやりたいことだし、なりたいものへのステップだから……


 そう思う私はわがままなのかな?


「ちょっと~。雪ちゃんテンション低い! 坂口くん、ちゃんと盛り上げてよね!」

「えっ? 俺、今運転中だから手が離せないんだけど?」

「ムード盛り上げろって言ってんじゃないのよ!!」


 ちょっと考えてただけなんですが。


 キャアキャア騒ぐ運転席と後部座席を見て、宇津木さんが小さく溜め息をついた。

「冴子うるさい。ピヨの事だから、どうせ何か妄想してたんだろ」


 も……


「妄想なんてしてませんからっ!!」

「そうか? お前はたまにトリップしてるじゃないか」

「人を変人みたいに言わないで下さい!」

「変人とは言ってない」

「言ってないだけでしょ!」

「よく解ったな」

「………っ!!」


 こ、この男はっ!


「私、寝不足なんで寝ます! おやすみなさい!」

 勢いよく言って目を閉じた。



「あ~ぁ……拗ねちゃったじゃない」

「……寝させておけ、うるさいから」

 うるさいは余計だ。
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