シャッターの向こう側。

恋人達……もしくはキャンプファイアー

******





「海……っ!!」

「海よ!!」

 にこやかな冴子さんと手を握りあって、遠くに見える海の煌めきを眺める。


 うわ~っ

 何年ぶりの昼間の海だろう~。

 夜とか夜中とかなら来てるけど、そもそも前回のイベントでも、近くにあるのは知っていても行かなかったんだよね。

 だとすると学生の頃以来かも知れない。

 そんなに遠くにはないし、車を借りれば来れなくもないけど、そもそも暇が無いんだよね。

 仕事が終わると18時は過ぎてるし、残業なんてあったらそもそも来れるはずがないし。

 休みの前の日に来ると言う手段も、無いこともない……

 だけど疲れていて、近場で過ごしたり、一日ボケ~っと家の事をしていたり……

 気がついたら寝ていたり……


「夏休みがあればなぁ」

 海岸特有の潮と砂の混じりあったような、独特の匂いを胸いっぱいに吸い込んでからポツリと呟くと、冴子さんがひょいと顔を覗いて来た。

「無いの?」

 あ。

 いや……

「お盆はあります。仕事が終わってれば」

「それじゃ夏も終わりじゃない」

 残暑は厳しいだろうけど、何て言うか終わると〝さてっ! 遊ぶぞ!〟って雰囲気でもないしなぁ……


「お前ら、手伝う気はないのか?」


 低い声に冴子さんと一緒に振り返る。

 借りたバンガローを背後にして、腕を組んでいる宇津木さん。

 そして、まぁまぁとバーベキューグリルを出している坂口さん。


「あ。何を手伝いましょう?」

 宇津木さんは眉をしかめた。

「……なんとなくいい」

 何故だ……っ!?

「なんかやらかしそう」

 そう言って、宇津木さんはタープを広げ始めた。


 ……人を何も出来ない人間の様に言わないでほしい。


 ムッとしていると、坂口さんが苦笑して手招きしてくれた。

「じゃ、神崎ちゃんは炭を起こしておいてくれる? 文化たきつけがそこにあるから、それに火を付けるだけだから」

 アウトドア用のライターと、何やら袋に入った板の様なモノを渡される。

「ガソリン臭いですね」

「うん。多分灯油じゃないかな。ガソリンは危ないから。じゃ、あっち手伝ってくるから」

 そう言って坂口さんは宇津木さんの方に行った。
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