シャッターの向こう側。
 とにかく、この文化焚き付けを燃やせばいいんだよね?

 割れ目があるから、そこから折って、それを網を外したグリルの底に置く。

 あ~……石油臭いってこう言うことをいうんだよね。

 うちはエアコンで過ごせるからあれだけど、実家は灯油ストーブだし、なんとなく懐かしい感じ。


 しばらく実家にも帰ってないなぁ。

 祖父ちゃん居なかったら、連絡もしないでっていつも小言が返ってくるし……

 でも、さすがに4年近く帰ってないのはまずいかな。

 今度のお盆は実家に顔を出しに行くか……


 祖父ちゃんが居れば。


 そう思いつつ、ライターの火を焚き付けに近づける。


「ピヨ……? ちょっ……待て!!」

「え?」


 宇津木さんの声に振りかけ……


「うわっ……!!」


 襟元を引かれてそのまま尻餅をついた。

 半端ないくらいにメラメラと燃え盛るバーベキューグリル。

 ほんの少しだけ焦げた毛先。


 か、髪は女の命ですから……っ!!


「この……っ馬鹿が!! こんな小さなグリルに焚き付け全部入れる奴がいるか!!」


 耳元で怒鳴られて固まった。


 ……ぇえ~と。


 この腕は誰?


 私の首から肩にかけて掛かっている腕は……?

 そして、背中にある温もりは?


「大丈夫!? 雪ちゃん!!」


 慌てて駆け寄って来た冴子さんが、目の前にしゃがんでくれる。


「ナイスよ、隆平」

 ぐっと親指を向けた先は背後。


 ……って。


 ぇぇええ!?

 振り返った先に不機嫌そうな宇津木さんの表情があって……


「うきゃ~~~!!」

 慌てて立ち上がって冴子さんを引き倒した。

「きゃ……っ!!」

「ごめんなさい……っ きゃぁああ」

 倒れ込んだままの宇津木さんの足に引っ掛かって、また背後に倒れ込む。

「うわっ!!」

「ごめんなさ……っ!!」


 また慌てて立ち上がろうとして、ガッシリ押さえ込まれた。


 って……
< 133 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop