シャッターの向こう側。
「…………」


 皆様、寝てますかね?


 耳を澄ませると静かな寝息が聞こえる。

 坂口さんは軽いイビキもかいている。

 ま、あれだけ飲めばね~。

 最後の方なんて、ほとんど潰れてたし、何より冴子さんがバンバン進めるから……


 ……ってか、昼間寝ちゃったから、全然眠れないんですけど。

 試しに羊を数えてみようか?

 頭の中に、アニメキャラよろしく、ふわふわの羊さん。

 うん。

 この子は女の子にしよう。

 オメメがパッチリで、睫毛が3本くらいあって。

 ピンクのリボンとかを頭に……


 返って頭が冴えたじゃん。


 しょうがないから、眠くなるまで起きていようか。

 溜め息をついてそっと寝袋から這い出すと、これまたソロッとバンガローを出た。


「うわっ」


 暗い。

 月明かりがあるから真っ暗闇と言う訳でもないけど、都会のネオンに慣れてるから異様に寂しい。

 遠くからは海の波の音も聞こえるし……


 実は怖いかも?


 でも、月が見えるだけマシかな。


 T市の出張の時、迷い込んだあの雑木林の暗さに比べたら全然平気かも。

 うん。

 あの暗闇に比べたら、これくらいは全然平気。


 バンガローの入り口前にある階段に座り、頬杖をついた。


 本当に静かなところだなぁ……


 波の音と時折遠くで聞こえる花火の音。

 光は見えないけれど音は届く不思議さ。

 しばらくそよ風に目をつぶっていると、背後でドアが開く音がした。
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