シャッターの向こう側。
「やめよう。不毛だ」

 宇津木さんは私を睨みながら溜め息をついた。

「お前と話していても埒が明かない」

「それはこっちのセリフです」

 ブツブツ呟くと、宇津木さんはあっさりと背を向ける。

「じゃ、お前はそっちな」


 何が?


「さっきの枝と似たような、軽い枝を探して来い」

 さっきの枝?

 私が投げちゃったやつ?


「とりあえずは俺はあっち見てくるから……」


 ちょっと待って!!


「うわ!」


 思わず宇津木さんのシャツの後ろを掴むと、砂に足を取られてずっこけた。


「口に砂が……」


「うわっ。気持ち悪っ!!」


 お互い砂まみれになって、四つん這いになる。


「……お前な。今のは仕返しか?」


 至近距離の端整な顔に首を振った。


 そんな、仕返しなんて後が怖い!!


「めめめ滅相もない!!」

「じゃ……どうした?」

 宇津木さんは砂の上に正座をして、偉そうに腕を組む。


「意味もなく俺を引き倒したのか?」

 意味って、しかもわざと倒した訳でもなく。

 至って不可抗力と言うか……


「なんだよ。言ってみろ」

 その。

 そりゃ、二人で散策する分には問題ないんですが。


 このただっ広い海辺を……しかも誰~もいない海辺を一人で歩くなんて……


 それはそれは怖くて……


 なんて


 言えないっ!!


 絶対馬鹿にされる!


 めちゃくちゃ馬鹿にされる! 

 あのニヤニヤ笑いをされるなんて嫌ぁぁああ!!


 …と、悩んでいたら、
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