シャッターの向こう側。
 俯いていた後頭部をチョップされた。


「うぎゅっ!!」


 砂浜寸前で顔面衝突を回避すると、ガバッっと顔を上げる。

「痛いじゃないですか!?」

「ああ、悪いな。とにかく立とうか」

 あっさりと流されて、思わず遠くを眺めそうになった。


 相変わらず容赦ないな、この男。


「何をぼんやりしてるんだ。行くぞ」


 グイッと腕を掴まれて立ち上がらせてもらいながら瞬きする。

 珍しい……宇津木さんが手を貸してくれるなんて!!


「天変地異の前触れ!?」

 飛び出した戯言に、宇津木さんの目が細められた。


「……何か失礼な事を言われているような気もするが、とにかく歩け」

「あ。はい」


 とりあえずセーフ?


「そしてとにかく拾え」


 まぁ、いいですが……


「流木なんてどうするんですか?」

「そりゃお前、焚き火に決まってる」

「決まってるんですか?」

「炭火だけだと面白くないだろう?」

 もしかして、アウトドアが好きなんだろうか。

「火遊びするとおねしょするって言いますよ~」

「それは見ものだな」

「いや。見たくないですから」

 大の大人がおねしょする姿なんて……


 考えていたら無言で頭を叩かれた。


 お星様が見えましたけどっ!!


「気持ち悪い想像をしてないで、拾え」

 このサド男が!!

 後ろからどついてやろうか!?

 なんて、不届きな考えもそこそこに、腕いっぱいの流木を拾って、バンガローまで戻った。



「それで、どこで火を起こすつもりですか?」

 見渡す限りの芝生。

 直接火をつけると、いくら私有地とはいえクレームがきそうだけど。

「バーベキューグリル」

「へ?」

「昼間、お前が燃やしたせいで塗装も剥げてるし、結構面白いぞ?」

 淡々と呟きながら、宇津木さんはグリルの網を外してその中に直接乾いた流木を入れる。

「え……でもいいんですか?」

「どうせ俺のだ」

 てか、車もないのにキャンプ用品だけ持っているんですか?
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