シャッターの向こう側。
「一つ聞いていいか?」

 宇津木さんは自分用のカップを持ちながら隣のチェアに座る。

「何か?」

「なんか最近、イライラしてないか?」

 ……それはどういう意味でしょう?

 目を細めると、宇津木さんは視線を逸らし、グリルの炎を眺めた。

「最近になって、仕事が楽しくなりましたけど」

「……そうか?」


 何が。


「何がおっしゃりたいんですか」

 宇津木さんは首を傾げて、ちょっとだけ難しい顔をする。

「お前って、表面上はバカだけど……」


 殴られたいのかこの人はっ!!


「まぁ、最後まで聞け」

 繰り出した拳を受け止められて、内心で舌打ちをする。

 なんでこっちも見ないで攻撃を受け止められるんだ……

「お前って、写真に出てくるんだよな」

 は?

「加納も気付いてるみたいだぞ? いじめ過ぎてないか……と聞かれたが。ちなみにいじめてるつもりはないが」

 いやいや十分でしょう。

 そりゃ~いじめかどうかと言われれば、いじめられてるつもりも特にないですが、なんとなく虐げられているような気がしないでもないのは確かですし。

 容赦ないだけだし。

「イライラして見えましたか」

「……そうだな」

 少なくとも、本人は気付いてませんけど。

 いつも通り出勤して、いつも通り仕事して、たまには宇津木さんと言い合いになるけど。

 前と同じようで、ちょっとだけ前とは違う。

 こなしていた仕事が、取り掛かる仕事になってきているのは確かだ。

 本人に言うつもりはないけど、宇津木さんや加納先輩のやり方に慣れると楽しかったりするし。

 それなりに忙しいけど、以前と比べると仕事に対する取り組み方も違うし、そうやって見るとうちの部の人はだいたい自由にさせてくれる……


 自分で考えながら撮影ができるというか……
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