シャッターの向こう側。
 小さな溜め息が聞こえて、宇津木さんを見た。

 気がつけば、宇津木さんは立ち上がって炎の中に木をくべている。

 しばらくボンヤリ眺めていたら、長いトングを持った宇津木さんが顔を上げた。

「今回のキャンプな」

「はい」

「坂口から持ちかけられたんだ」


 ……坂口さんから?


「お前のスケジュール的な部分では、ほとんど俺が関わって仕事を振ってるからな」

「……時間、ですか」

「最近二人であまり会わないとか?」


 そんな話をした訳ですか。


 私の表情に宇津木さんは手を振った。


「勘違いするなよ? 坂口が言った訳じゃない。俺の勝手な憶測だ」


 そう……ですか。

 無言になった私をしばらく眺めて、宇津木さんはテーブルにトングを立てかける。

 火の爆ぜる音と、ゆらゆらと揺らめく炎。


 月夜とは言え、闇に包まれた空間。


 遠くに海鳴り、そして小さな虫の声……


 とてもゆっくりとした時間。


 普通なら、リラックスできそうな風景。

 だけど、何かがしっくりこない。


「今日は楽しくなかったか?」


 ううん。


 楽しかった。


「一応。緑と海とある場所って事で、坂口からリクエスト受けてたんだけどな」


 ああ、そんな所まで考えてくれていたんですね。


 その心使いが嬉しくて……


 だけど



 息が詰まる。
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