シャッターの向こう側。
「…………」

 なんとなく追い払った感MAX。

 いや別にそんな訳じゃなかったんだけど、ちょっと弱ってる人相手を、からかうもんじゃないかもしれない。


 ……まぁ、いいか。


 気を取り直して立ち上がると、目についた乗り物という乗り物に乗って、外側から撮った方がいいか、それとも乗ってるうちに撮った方がいいか、検討しながらカメラを構える。


 それからふと、親子連れの2組に出会った。


 一組は、お揃いのシャツを着て、手をつないでクレープを食べている。

 そして、もう一組は、子供は風船とぬいぐるみを持ち、親はその後ろをついて歩いている。


 私の子供の頃はどうだったろう。


 たぶん、後者の親子連れかな。

 落ち着きなさいとか、走るんじゃないとか、よく言われていたっけ。

 どちらの親子も仲が良さそうだけど、私は親と……と言うよりは、お祖父ちゃん子だったから。


 私に写真を撮ることを教えてくれたのはお祖父ちゃんだ。

 高校を卒業し、専門学校に通うと言い出した私に、お祖父ちゃんは〝ユキの好きに生きなさい〟と送り出してくれた。

 父や母は〝ちゃんとしたところに進学しなさい〟と言っていたけど、大学に進学する気は全くなかった。

 未だにちゃんとした仕事に就きなさいだの、落ち着いて考えなさいだのと言うけれど……

 ちゃんとした会社に、一応は就職しているし、昔に比べると落ち着いたとも思うんだけど。


 ……いや。

 まだ落ち着いてないかもしれないか。

 苦笑して、肩をすくめる。


 まだまだ、この世界じゃ若造なんだよ……私。


 ぼんやりと歩きながら、目に止まった風景を写し撮っていく。

 そうしているうちに夕暮れになり、西日の最後の光を眺める。


 黄昏時……とはこういう事を言うんだろう。


 Sunsetと言うよりも、夕暮れというよりも、目に映る光の赤に近い黄金色は、黄昏時と言う言葉がよく似合う。

 最後の日の光が、あたりを黄金色に染めて……


「…………」


 ところで……


 ここはどこなんだろう?


 気がつけば、遊技施設どころか、何故か森のような鬱蒼とした地区に入り込んでいた。
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