シャッターの向こう側。
 やぁ……

 いろんな意味で、こうなると大変なのよね。

 とりあえず辺りをキョロキョロしてホテルを探す。

 確か25階くらいの高さがあるから遠くからでも判ると思うんだけど、背後の背の高い木が邪魔をして分かりにくい。

 一応、西日はあっちで、つまり私が見てる方向は西な訳でしょう?

 で、背後が東で……

 でも、歩いて来たのは方向的には南側……?

 遊技施設は中央だから……


 落ち着こう。

 というか、落ち着け私!

 焦っても仕方がない。

 とにかく、打ち合わせで見えた景色から、こんな森みたいな場所が見えたか記憶を探る。

 正直言うと、あまり覚えてないけど。


「ここは南かなぁ……」


 確か東は商業地区。

 レストランやお土産物屋さんの地域で、北欧風の建物があったはず。


 ここには間違いなくない。


 そして西はプールのガラスドームがあって……って言っても、ホテルに直結だから、ドームが見えればいくらなんでもホテルの外装くらいは見えるはず。

 とすると……とにかく北に向かえばいいんだ!

 そのうち、何か見えてくるだろう。

 勇気を持って歩き出した。

 まぁ、そりゃドンドン暗くなるし、人っ子一人居ないけど、それはプレオープンだから、そもそも招待客しかいないんだし。

 そのうち……何かの建物が見えると思う。

 というか、見えて欲しい。


 薄暗くなって行くうちに、どんどん不安になっていく。

 ……ホントに、こっちで合ってたんだろうか?


 何か……ますます木の高さが増してきてるような気がする……


 舗装された道路じゃなくなってるし、踏みしめる足元は少し柔らかい。


 そして、足もとが薄っすらとしか見えなくなってることに気がついた。


 街燈らしきものもない。

 空は赤というより、すでに夕闇の藍色に包まれ始めている。


 どうしよう。


 私、サバイバルには向いてないと思うの。


 ……そうじゃない。


 そんな問題じゃない。

 どうすれば……


 パキンと乾いた音がして、自分が踏みしめた小枝にビクつく。

 風が木々を揺らす。

 その吹きすさぶ音が、物悲しげに辺りを包み……


 心臓の音が思考を飲み込んでいく。


 どうしよう……
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