シャッターの向こう側。
 実は、私物の写真を見てるんですが。

 仕事もあと二件だけだし、明後日までの一件はすでにOKもらったし……。

 終業間近だし。


 いいかな~……なんて。



「……タイムカード押してからやれよな」



 うふふふふ~。



 バレバレだったか……。


「内緒にしておいて下さい」


 宇津木さんは呆れた顔をして、肩を竦めた。

「別にフォトコンに出すわけじゃないんだろ?」

「それとこれとは別です」

 いつもフォトコンに出すからって、写真を撮ってる訳じゃないし。

「見てもいいか?」



 え。



 嫌です。



「……見るくらいいいだろ」


 睨まれて、視線を逸らせる。



 表情に出てたかも知れない。



「宇津木さんて容赦ないんだも……」

「あのな。見た感想に手心加えても仕方がないだろうが」

「そりゃそうですけど」



 その容赦なさが、グサグサと突き刺さると言うか……。

 言葉使いには手心加えてもいいと思う。


「それに、俺は専門家じゃないからな。見たままの事しか言えない」

「それが一番怖いんじゃないですか」

「それが一番為にもなるだろ」



 ……間違いなく。



 渋々、写真の束を渡すと、宇津木さんはちらっと周りを見てから呟いた。

「だいたい、おためごかしを聞かされて喜ぶ奴はどうかしてるだろ」



 うわ~……。




 こわ~……




「宇津木さんて、ダイレクトに凄い事を言いますよね」

「誰にでもって訳でもないぞ? 面倒だ」



 てか〝面倒〟の一言で終わらせる事柄でもないと思うんだけど。



 でも……

 宇津木さんってそう言う割りに、ずいぶんとややこしい事ばっかり引き受けてる気もするだけど。


 思えば不器用な人なんだろうな。


 私も器用とは言えないけど。


 写真を見てる宇津木さんを眺め、つくづくそう思う。
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