シャッターの向こう側。

感覚……もしくは疑問

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 次の日の夕方。

 佐和子を飲みに誘って、近所の居酒屋に向かった。

 正直言って最近、私自身何を考えているのか全然解らない。

 そんなアレやコレやを佐和子に言うと、烏龍ハイを飲んでいた佐和子が持っていたジョッキをテーブルに置いた。


「あのね。言わせてもらっていい?」

 睨み付けられてシュンとなってしまう。

 佐和子はどちらかと言うと、切れ長瞳の美人さんだから……

 睨まれると正直怖い。

「は、はい」

「あんたが解らないものを、何故私に相談する訳?」

「それは、解らないから」

「解らないって相談された方が解らないわよ~!!」


 だって、人に相談したことなんかないんだもん!!

 二人で頭を抱えそうになって、いち早く立ち直った佐和子が咳払いする。

「だいたいあんた、いつも自分で決めて、自分で行動してきたじゃないの」

 うん。

 まぁ、上京を決めた時ですら誰にも相談した事がない。

 まず親に猛反対くらってお祖父ちゃんは味方してくれたけど、けっこう孤立無縁な戦況だったし。

 まわりの友達やなんやかんやは、そんな夢物語は諦めろと言う人とか、ただ頑張ってと言う人とか……

 あ。

「今、反対勢力がいないの」

「はぁ!?」

 考えて見れば私って……

「どうも、立ち向かってくる人がいればいる程、燃えるみたい」

「難儀な性格ね」

 ちょっと、その言い方はない。

「とりあえず今のままじゃ嫌な訳よね?」

 それは当たり前。

「まぁ、私から見ても、私に相談してくる雪なんて初めて見たけど」

「私も初めて相談した」

「何がどうおかしくなったのかしらね?」

「私にもそれが解らない。だいたい、理論的なのはいつも佐和子じゃないの」

 佐和子はジョッキを取り上げようとし、途中で何か考え始めた。

「……そうね。どちらかと言えば、あんたより私の方が論理的ね」


 おいおいおい。

 何故、そこで批評を始める。


「あんたは確かに、稀に見る感覚で動く人間よね」

「ん?」

 感覚で動く人?

 それって……

「佐和子まで私を頭空っぽみたいに言うわけ!?」
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