シャッターの向こう側。
 わ、私、顔にでも出てた?

 そんなに解りやすかった!?

 慌てて顔をピタピタ叩くと、目を丸くした有野さんが佐和子を見た。

「彼女、何してるの?」

「考えてることが、顔に出てたか確かめているだけです」

「……面白いね」

「有野さん、この子を知ってるんじゃないんですか?」

「いや。仕事の依頼は、いつも荒木さん通してだから」


 ……あの。

 私は面白くはないです。

 半眼になりながら二人を眺めると、同時に咳払いした。



「あ~。なんて言うか、ごめんなさい」

 有野さんはアッサリ謝って頭を下げる。

「とにかく仕事の話ね? それなら宇津木に相談すればいいと思うが。アイツは君を見てるんだし?」

 はい?

 パチクリと瞬きすると、有野さんは目を丸くした。

「あれ。気付いてない?」

「何をですか?」

 有野さんはマジマジと私を見て、それから何を見つけたのか、何かに気がついて深い溜め息をついている。


「……宇津木がね、君を心配してた」

 宇津木さんが?

 私を?

「コンクールの写真はいいのに、何故、仕事だと発揮されないんだろう……って」

「………?」

「僕も君に頼んだことあるからアレだけど……自由にやらせてみるってアイツは言ってたけど、うまくいかなかったの?」


 何が?


 自由に……

 自由。

「……あ」

 と呟いた私に、有野さんは首を傾げる。

「あの、いえ。出張に行く前は、確かにやり甲斐がなかったんですけど、自由にさせてもらって楽しくなりました」

「うん。楽しくってのは、君みたいな人だと重要だよね?」

 ……そうとも言いますかね。

「なら、仕事の何が問題になってきているの?」

「や。厳密には、仕事と言いますか……」

 もじもじしながら、おしぼりを手に取った。

「以前は、何をこう撮りたい……とか、明確に見えていたんですけど」

「うん?」

 フワッと微笑まれて、ますますもじもじする。

 なんかこの人って、見た目や態度は軽いけど、とても優しそうな眼をしてる。

「今、自分が自分で何を撮りたいのか、それが目に見えないんです」
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